【絶対役立つ】中学受験アドバイス集

私立中学について、お役立ち情報を書いていきます。

偏差値だけで学校を選ぶ|間違いだらけの私立中学選び

受験と言えば偏差値。日本人が偏差値にこだわりを持つのは、中学受験だけにとどまりません。高校、大学受験であっても同じです。

では、「偏差値とは何か」。このことをしっかり理解している人はどれくらいいるでしょうか。まずは本論に行く前に、「偏差値60は頭いい」「偏差値40は勉強できない」の誤解をときたいと思います。

 

偏差値とは、「母集団の中で自分の相対的な位置を知るための数値(『間違いだらけの中学受験』(おおたとしまさ著 ベスト新書))」です。

A模試の偏差値50の人とは、簡単に言えば、A模試で平均点だった人のことです。

平均からどれくらい上位・下位に離れているかで、偏差値が上がったり、下がったりします。

 

ここで注目して頂きたいのが「母集団」という単語です。

模試で言う「母集団」とは、「その模試を受けた人全員」のことです。

では、中学受験において、「その模試を受けた人全員」とは誰の事でしょうか。

もちろん「中学受験生」ですね。(なかには腕試しで受けている、中学受験をしない児童もいるかもしれませんが)

そうです。中学受験模試の偏差値は、中学受験生の中だけの話なのです。

中学受験の割合は一都三県で5人に1人という話は前回のブログでしました。

要は、(一都三県で言えば)中学受験をする20%の児童の中での話なのです。

中学受験をする児童は、塾に通い、難しい問題を解き、非受験組と比べ物にならないくらい勉強しています。その中での偏差値だということを肝に銘じておきましょう。

 

しかも、全ての模試を、全ての中学受験生が受けるわけではありません。

SAPIXの模試であれば、難関校受験生が多く、

首都圏模試であれば、中位校受験生が多く含まれます。

要は、受ける模試によっても偏差値は変わるのです。

 

ここまで読めば、お分かり頂けると思います。

中学受験偏差値が50未満であっても、お子さんのレベルが決して低いわけではありません。中学受験組の母集団自体がすでに優秀だからです。まずは、その中でお子さんが、他の受験生と切磋琢磨していることを認めてあげてください。

 

さて、ここからが本題。

では「学校ごとの偏差値」はどのように決まるのでしょうか。これについては、前出の『間違いだらけの中学受験』(おおたとしまさ著 ベスト新書)を引用したいと思います。

中学入試が終わり、合否が確定したころ、模試の実施業者は、模試受験生一人ひとりの入試結果を調査する。そして保管していた模試の偏差値と入試本番の合否を照合する。(中略)偏差値56で合格者と不合格者が半々になり、偏差値58では合格者が8割を超え、偏差値61では100%合格していることがわかる。つまりこの学校には、偏差値が56であれば、50%の確率で合格できるし、偏差値が58であれば80%の確率で合格できるということだ。これを、各学校について求めれば、それぞれ50%の確率で合格できる偏差値、80%の確率で合格できる偏差値を出すことができる。(中略)こうして、本来であれば受験者に付されるべき偏差値が、学校に付されるのだ。

学校の偏差値は、模試業者が、自社の模試を受けた人の入試結果を調査し、偏差値における合格可能性の割合を算出したものです。ですから、模試会社ごとに、学校の偏差値は当然変わります。また、中学受験の偏差値は入試日ごとに算出されます。ですから同じ学校の1日目の偏差値と2日目の偏差値では大きく異なる場合があります。さらに、同じ学校のコース(特進コースか進学コースか)によっても偏差値は変わります。

百聞は一見にしかず。実際の偏差値表を見てみましょう。

日能研 2018年結果偏差値 首都圏男子)

https://www.nichinoken.co.jp/np5/schoolinfo/pdf/r4/results/r4_2018_e_m.pdf

さて、ここで問題です。

あなたの言っている「偏差値60の頭のいい学校」とは、どの模試の、どの入試日の、どのコースの偏差値のことでしょうか。さらに繰り返しになりますが、中学受験組は、学習塾に行って勉強している児童が母集団です。「偏差値40の学校は勉強ができない生徒が通う学校」なのでしょうか。

 

このことを理解していない保護者の方が本当に多いと思います。

 

保護者が偏差値を理解していないことを逆手に、入試日をずらしたり、コースを細かく設置する学校もあります。偏差値が高く見せれば学校のブランド構築になるからです。

さらに、宣伝や改革による期待値で沢山の受験生が集まり、偏差値が高くなる学校もあります。

逆に、堅実な学校ゆえに宣伝や改革をせず、コース制を敷かず、入試回数も少ない学校は、偏差値表の下位に埋もれてしまいがちです。

 

さて、そろそろまとめに入ります。

私が言いたいのは、「偏差値に踊らされてはいけない」ということです。偏差値は「利用するもの」です。

偏差値をきちんと利用すれば、自分の立ち位置が理解でき、無駄な受験の失敗をせずに済むというメリットがあります。一方で偏差値の良し悪しだけに囚われ、子供の前で一喜一憂するのは愚の骨頂です。増してや、偏差値の高い学校=良い学校・行かせたい学校と決定するのは、かなり危険だということを認識しておいてください。それにより、下位偏差値でも良い学校を見逃している保護者がどれだけ多いことか。

私自身、保護者と受験相談をする機会があります。そこで話を聞くたびに、偏差値だけで学校を選ぶ親が多いことを痛感します。どうか、偏差値だけにとらわれず、せめて偏差値上下5ポイントくらいの範囲で学校を探してほしいと思います。

 

今回は長文になりました。最後に花まる学習会・代表 高濱正伸先生の著書『危ない中学受験』(幻冬舎エデュケーション新書)の引用で終わりたいと思います。

第一志望校のトップ校に合格しても、ギリギリで合格した結果、入ってみたら周りは成績優秀な生徒だらけ。結果、いつも成績下位層に定着して、すっかり自信をなくしてしまうというケースがよくあります。合格という喜びは手にしたものの、勉強へのやる気を失うという悲劇がそこに生まれます。一方、行ったのが第2志望校だったとしても、成績は常に上位。その充足感が、勉強へのモチベーションを高め、トップ校の生徒と同じように、難関大学を目指すケースもまたよくあることです。中学受験での落胆と引き換えに、のびのびとした中学・高校生活と、学力面での自信を手にした結果です。

偏差値が高いからいい。低いから悪い。ではなく、自分に合った学校を第一志望にして欲しものです。